材料学I(Materials I)
本科選択・必修開設時期単位数授業形態担 当
機械電気必修3年2講義伊藤 尚
【授業の概要】
機械や構造物の開発や設計・製作に携わる技術者には、目的とする機械部品に適した材料を選定し、設計の意図を満足する方法を選んで適切な加工することが可能な知識が必要である。そこで、材料学では材料の性質、とりわけ強度などの機械的性質の本質を理解し、必要に応じてその材料に適した加工や熱処理などの処置が行えるようになることを目的に、材料の基礎的事項および、材料の変形、加工、熱処理など、主として機械的性質にかかわる処理法とその意味を学習する。
【授業の進め方】
前期は機械材料の基礎的性質、後期は鉄鋼材料について学習する。授業の進め方はおおむね教科書に沿って講義形式で進めるが、教科書だけでは説明不足の箇所に関しては適宜プリントを配布して説明する。また、各時間ごとに学習シートを配布し、授業で学んだ内容の確認を行う。
【授業計画】 【授業項目】 【内 容】
1 回 オリエンテーション
物質の結合
シラバスにもとづきオリエンテーションを行った後、材料の性質の基礎となる物質の結合について学ぶ。
2 回 結晶格子 原子が規則的に配列する結晶について学び、結晶格子における面と方向の表し方を知る。
3 回 金属の結晶構造 金属における代表的な三つの結晶構造について学習する。
4 回 結晶の欠陥
 −点欠陥、面欠陥−
金属の機械的性質に大きな影響を及ぼす格子欠陥の種類と特徴について学ぶ。
5 回 結晶の欠陥
 −線欠陥−
材料の塑性変形に大きな影響を及ぼす転位の定義を学び、転位の運動を理解する。
6 回 すべり変形 材料の塑性変形の大部分を占めるすべり変形について転位の運動と関連づけて理解する。
7 回 破壊 材料の破壊形態を学び、その破壊機構を理解する。
8 回 相律および平衡状態図 (1)
 −二元系平衡状態図−
共晶型平衡状態図について学び、共晶型合金の特徴を理解する。
9 回 中間試験
10 回 中間試験の解答、解説
平衡状態図 (2)
 −共晶型平衡状態図−
中間試験の答案を返却し、解説を行った後、相律および全率固溶体型平衡状態図について学び、全率固溶体型合金の特徴を理解する。
11 回 凝固および相変態 材料の液相から固相への凝固過程について学び、固相内での相変態を理解する。
12 回 加工と再結晶 冷間加工および熱間加工について学び、熱間加工中に生じる回復、再結晶を理解する。
13 回 材料の機械的性質と試験法(1) 材料の引張り試験や機械的特性などについて理解する。
14 回 材料の機械的性質と試験法(2) 材料の硬さ試験や機械的特性との関連について理解する。
期末試験 合金を理解する上で重要な平衡状態図および加工と再結晶について理解できているか確認する出題。
15 回 答案返却など 期末試験の答案を返却し、解説を行う。
16 回 Fe-C系平衡状態図 鉄鋼材料の製造法について学んだ後、鉄鋼材料の熱処理に必要不可欠なFe-C系平衡状態図について学ぶ。
17 回 組織に及ぼす冷却速度の影響 過冷オーステナイトの変態点に及ぼす冷却速度の影響を理解した後、恒温変態について学ぶ。
18 回 焼入れおよび焼もどし 鋼のマルテンサイト変態を理解した後、焼入れおよび焼もどしの目的および方法について学ぶ。
19 回 焼なましおよび焼ならし 鋼の焼なましおよび焼ならしの目的および方法について学ぶ。
20 回 純鉄および極軟鋼 工業用純鉄および極軟鋼の性質および用途について学習する。
21 回 一般構造用鋼および高張力鋼 一般構造用鋼の性質および用途について理解した後、高張力鋼について学ぶ。
22 回 機械構造用鋼 (1) 鋼の性質に及ぼす合金元素の作用について理解し、鋼の焼もどし脆性について学ぶ。
23 回 中間試験
24 回 中間試験の解答、解説

機械構造用鋼 (2)
中間試験の答案を返却し、解説を行った後、機械構造用鋼の種類、性質およびそれらを実際に使用する場合の選択方法について学習する。
25 回 高強度鋼およびばね鋼 高強度鋼およびばね鋼の種類、性質および用途について学ぶ。
26 回 工具鋼および軸受鋼 工具鋼および軸受鋼の種類および用途について学習する。
27 回 ステンレス鋼 (1) 鋼の耐食性について理解した後、フェライト系およびマルテンサイト系ステンレス鋼の性質および用途について学ぶ。
28 回 ステンレス鋼 (2) オーステナイト系および析出硬化型ステンレス鋼の性質および用途について学習する。
29 回 鋳鉄および鋳鋼 鋳鉄の組織について学んだ後、鋳鉄および鋳鋼の種類、性質を理解する。
期末試験 機械構造用鋼および各種合金鋼と鋳鉄の種類、方法や用途が理解できているか確認する出題。
30 回 答案返却など 学年末試験の答案を返却し解説を行う。
【到達目標】材料学の最終的な到達目標は機械の設計において的確な材料に適切な熱処理を行って使用できるようになることである。その中で3年次の材料学では材料の基礎的性質を理解するとともに最も使用されることが多い鉄鋼材料の種類、性質および用途を理解することを求める。
【徳山高専学習・教育目標】A1 【JABEE基準】 
【評価法】(1)4回の試験結果を総合評価する。
(2)総合評価式=前期中間(20%)+前期末(20%)+後期中間(20%)+学年末(40%)
【テキスト】教科書 :日本材料学会編、「改訂 機械材料学」(日本材料学会)
関連図書:大和久重雄、「JIS鉄鋼材料入門」(大河出版)
     門間改三、「大学基礎 機械材料 改訂版」(実教出版)
【関連科目】本 科:機能材料、機械設計論I、II、材料力学I、II、弾塑性論
専攻科:材料設計工学、材料強度学、弾性力学