学生の皆さんへ

 「人生は、重き荷を背負いて、遠き道を行くがごとし」と、徳川家康が言いました。電車の無かった時代です。現代風にいうと、「人生は、電車に乗って目的地を目指すようなもの。」と言ったところでしょうか。

 世界中のどこへでも、短時間で容易にたどり着くことができる時代になりました。テレビで「世界の車窓から」を見ていると、いつものどかな風景がひろがり、豊かな時間、くつろぎのひとときを感じさせられます。

 ところが、実際にはこの電車の旅はそう簡単ではありません。まず、時間を気にしなくてはならないし、切符も購入しなくてはなりません。のんびりして、あるいは、時間を忘れて寄り道していると駆け込み乗車するはめになり、駅員にホイッスルを鳴らされマイクで叱られます。あるいは、車中居眠りして過ごしていると目的地で下車できずに、・・・気がつくとびっくり。無事、目的の駅に到着しても、改札を出る段になって切符を遺失していたとなると大惨事です。そして、ようやく改札を出ると、駅には北口と南口があり、場合によっては中央口やら東口や南口までもがあったりもします。そして、この出口を間違えると、薄暗い?地下道を見つけて、ひたひたと重き荷を背負って歩くことになります。また、目的地の予備知識なしに外に飛び出ると大変暑かったり寒かったりして、大風邪をひいてしまうことになりかねず、時にはカルチャーショック(これを期待している旅人も多いのかもしれませんが)を受けることもあります。・・・いかがですか、目標(目的地)を決めて、(学びながら)準備して生きて行く、そんな人生と似ていると思いませんか。

 キャリア教育支援室は、ある意味、そんな旅人(学生さん)のためのツアーガイドなのかも知れません。


 学生に対する進路指導とは、電車を乗り継ぎながら目的地に向かう学生に「あなたの降りる駅はどこですか?」と問いかけ、「切符はちゃんと持っていますか。」「駅に着いたら何番出口ですよ。」とエスコートすることであり、カルチャーショックを受けることの無いように目的地の様子を知らせることにあると思います。大勢いる学生に対して一人一人手を引いてのエスコートまではできませんが、目的地への意識を常に持ちつづけるよう声をかけ、旅の道中と目的地の情報提供をすることはできると思います。

 高専在学中、低学年では、世界の広さや各目的地の楽しさとそこで生きることの厳しさを教え、目的地までの旅の(時には乗り継ぎの)スケジュールを示し、切符を入手して、しっかりと落とさないように指導し、高学年では、目的地での改札を通り抜けるためのノウハウと、目的地で生きて行くための準備をするようにアドバイスすることができるのではと考えています。

 具体的には、低学年では、支援室からのアドバイスや進路適性検査といったキャリアサポートプログラム、そして、高学年の先輩からのアドバイス等を準備します。また、高学年では、再度、目的地を明確にするようアドバイスし、個人別にキャリアサポートするためのプログラムを用意しています。例えば、就職や進学試験の際の個人面接や集団面接の練習を行ったり、履歴書やエントリーシートの書き方を個別に指導したりするプログラムもあります。目的地の様子を目的地で活躍している人や先輩に来てもらって話してもらう事も計画しています。進路に関する多くの情報がホームページで検索可能になり、そのほかの進路情報関係の資料を一括して整理するキャリアサポートブースを準備します。


 さて、こう書きつづると、支援室があればもう大丈夫であるかのように感じられますがが、くれぐれも、「キャリア教育支援室が皆さんを幸せにするのではなく、キャリア教育支援室は、皆さんが幸せになろうと努力するのを応援するシステムである。」ということを忘れないで下さい。あくまで‘応援団’なのです。・・・皆さんのご健闘を心から祈念いたします。

 最後に、徳川家康の言葉は「・・・急ぐべからず。」と、続きます。急がず休まず、千里の道も一歩から。・・・重き荷を大切にしつつ・・・。

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