第30回卒業式・第12回専攻科修了式

式辞  徳山工業高等専門学校長 平野 千博

 本日、ここに、島津周南市長をはじめご来賓の方々並びに多数の保護者の方々をお迎えして、徳山工業高等専門学校第30回卒業式及び第12回専攻科修了式を挙行できますことは、本校教職員並びに在校生一同の大きな喜びであり、ご臨席の皆様方に対し、心からお礼を申し上げます。
 ただいまご覧いただきましたように、それぞれの課程を修めた卒業生、専攻科修了生、合わせて145名の若者が、本日、この学舎から、新しい道を求めて、巣立っていくことになりました。彼らの新しい門出を迎え、これまで彼らを支え、励まし続けて頂いた保護者の方々、関係者の方々のお力添えに対し、本校を代表して、改めてここに、感謝の意を表させて頂きたいと存じます。
 卒業生の中には、アルゼンチンおよびカンボジアからの、2人の留学生がいます。母国に思いを馳せながら、徳山高専において勉学に励んだ、その向学心と努力に対して、お国の国旗を日の丸とともに掲げることにより、敬意を表したいと思います。同時に、彼らを温かく育んでくださった地元周南地域の皆様方に、彼らとともに、感謝の思いをお伝えいたしたいと存じます。

 卒業生、修了生の皆さん、おめでとうございます。
 今、皆さんは、ここ徳山高専で過ごした日々のことを、それぞれに感慨深く思い出しておられることと思います。私自身も、たった今、皆さん一人一人に、卒業あるいは修了の証書をお渡ししながら、胸の中をよぎるものの多さとその熱さに、とまどうような思いでした。また、皆さんの中には、新しい道に挑もうとする者の常である、かすかな不安を感じている方がいらっしゃるかも知れません。旅立ちにあたって、そのような不安を抱くことは、誰しもあることです。
 しかし、一つはっきり言える事があります。それは、今、皆さんの胸の内に去来しているであろう、この数年間の徳山高専での生活。その中で、伝え、伝えられたこと、共に作ったこと、競ったこと、そういった諸々の活動を通じて皆さんが培ってきた力は、皆さん自身が感じている以上に強く、大きいものであるということです。その力をもってすれば、遅かれ早かれ、新しい道を、自信をもって歩いていけるようになるはずです。私は、いえ、私だけではありません、今日ここにお集まりの方々は皆、皆さんがそういう力を身につけたことを感じ、確信し、そして誇らしく思っているのです。

 そのような皆さんに、いまさら、この場で、多くを付け加える必要があるとは思えません。したがって、これからの皆さんの将来への期待をこめて、一つだけ、お話ししたいと思います。それは、皆さんが本校で学んできた「技術」がこれからますます重要になるだろうということです。

 最近の出来事の中で、私にとって特に印象に残っていることの一つは、昨年12月、ノーベル平和賞が前の米国副大統領であったアル・ゴア氏と国連の「気候変動に関する政府間パネル」、通称IPCCと呼ばれている組織に授与されたことでした。授賞理由は、人類による石油等の大量消費が地球の温暖化を引き起こしている、そのことについて世界の人々の認識を高めることに貢献したというものです。地球温暖化の警鐘を鳴らす活動にノーベル平和賞が贈られたということは、地球温暖化が人類にとって極めて危険な現象であり、世界の平和に対する脅威となっているということを示すものです。

 最近起きている出来事の中でもうひとつ気になる現象があります。それは、石油価格の値上がりです。これは、世界の経済発展、中でも、これまで経済的に恵まれなかった中国やインドといった大国が経済的に発展し、石油を大量に消費し始めたということに基本的な原因があります。これまでは、石油を大量に消費する国は、世界の中では一部の先進国のみに限られていました。しかし、今、多くの新興国が豊かな国々の仲間入りをしつつあり、今後石油を大量に消費し始めていくと予想されております。そのことが最近における石油価格上昇の背景にあります。

 このようなことは、私たちにとってどのような意味があるのでしょうか。
 これらの現象が私たちに警告していることは、私たちが、これまでと同じような生活、すなわち、石油を大量に使うような生活を続けていくことは、いずれできなくなるということです。
 生活を変えていかなければならない。しかし、安全で、安心で、快適な生活は維持したい。こういった互いに相矛盾する願望は、どのようにすればかなえることができるのでしょうか。この矛盾を解決するものとして期待されるのが新しい技術なのです。

 私たちの生活の中では、様々な技術が利用されています。しかし、現時点で利用可能な技術を基にした、今の生活の仕方では、石油を使い過ぎます。いずれ、行き詰まってしまうことになるでしょう。このままでは、地球温暖化が進み、他方では世界の人々の間で石油の奪い合いが起きてしまうかもしれません。
 私たちは、将来に備えて、より少ない石油を使いながらも、生活の質を維持する方法を探し出さなければなりません。より少ない石油を使いながら、安全で、安心で、快適な生活をおくる、そのようなことを可能にする新しい技術を開発し、量産化し、生活に取り入れていく必要があります。これが、技術に対する新しい時代の要請の重要な一項目になってくると思います。このようなことを実現していくのは、技術を専門的に身に付けた皆さんの活躍がなくては、極めて難しいことは明らかです。

 これから社会に羽ばたいていく皆さんは、社会に出たらこのようなことをしたい、このようなものを作ってみたいといった夢をお持ちだろうと思います。皆さんには、自らの夢に新しい時代の要請を重ね合わせ、自らの夢に果敢に挑戦するとともに、社会にも大きく貢献する、そういった未来を期待したいと思っております。

 新しい時代の要請に応えて頑張らなければならないのは、皆さんだけではありません。この徳山高専も、新しい時代の要請に応えていかなければなりません。
 徳山高専は、今後も、そのとき、そのときの時代の要請に応えられる学校であり続けたいと思っております。

 本校を卒業する皆さん、これからも皆さんの母校である徳山高専を応援してください。

 本校もまた、皆さんの将来を、期待を込めて、見つめ続けてまいります。どうか、皆さんの母校、徳山高専で学んだことに、自信と誇りを持って、それぞれの道を力強く歩んでいってください。

 最後に、皆さんにお会いできたこと、そして皆さんの門出に栄誉ある役割を果たすことができたことに、心から感謝して、式辞といたします。

                            平成20年3月12日
                      徳山工業高等専門学校長  平野 千博