本日、ここに、ご来賓並びに多数の保護者の方々をお迎えして、徳山工業高等専門学校第27回卒業式及び第9回専攻科修了式を挙行できますことは、本校教職員並びに在校生一同の大きな喜びであり、ご臨席のみなさま方に対し、心からお礼を申し上げます。
ただいまご覧いただきましたように、それぞれの課程を修めた卒業生114名、専攻科修了生25名、合わせて139名の若者が、本日、この学舎から、新しい道を求めて、巣立っていくことになりました。彼らの新しい門出を迎え、これまで彼らを支え、励まし続けて頂いた保護者の方々、関係者の方々のお喜びはいかばかりかとお察し申し上げます。みなさま方のお力添えに対し、本校を代表して、改めてここに、感謝の意を表させて頂きたいと存じます。
卒業生の中には、2名の留学生が含まれています。母国に思いを馳せながら、徳山高専において勉学に励んだ、セレイヴィラさんとフーオンさん。その向学心と努力に対して、お二人のお国の国旗を日の丸とともに掲げることにより、敬意を表したいと思います。同時に、彼らを暖かく育んでくださった周南市、周南地域のみなさま方に、彼らとともに、感謝の思いをお伝えいたしたいと思います。
卒業生、修了生のみなさん。おめでとうございます。
今、みなさんは、ここ徳山高専で過ごした日々のことを、それぞれに感慨深く思い出しておられることと思います。私自身も、たった今、みなさん一人一人に、卒業あるいは修了の証書をお渡ししながら、胸の中をよぎるものの多さとその熱さに、とまどうような思いでした。また、みなさんの中には、新しい道に挑もうとする者の常である、かすかな不安を感じている方がいらっしゃるかも知れません。旅立ちにあたって、そのような不安を抱くことは、誰しもあることです。
しかし、一つはっきり言える事があります。それは、今、みなさんの胸の内に去来しているであろう、この数年間の徳山高専での生活。その中で、伝え、伝えられたこと、共に作ったこと、競ったこと、そういった諸々の活動を通じてみなさんが培ってきた力は、みなさん自身が感じている以上に強く、大きいものであるということです。その力をもってすれば、遅かれ早かれ、新しい道を自信をもって歩いていけるようになると確信しています。私は、いえ、私だけではありません、今日ここにお集まりの方々は皆、みなさんがそういう力を身につけたことを感じ、確信し、そして誇らしく思っているのです。
そのようなみなさんに、いまさら、この場で、多くを付け加える必要があるとは思えません。したがって、これからのみなさんの将来への期待をこめて、一つだけ、お話したいと思います。それは、「ものづくりとは、人間らしく生きる証である。」ということです。
「道具を使う。」というのは、高等動物の定義の一つです。チンパンジーやゴリラが道具を使うことは良く知られています。二枚の石を使って木の実を割ったり、木の枝を使って、蜂の巣から蜂蜜をすくって食べたりもします。木の枝に余分な葉っぱなどがついている場合には、それをむしりとって、使い易くするという加工さえするそうです。道路にわざと貝や木の実を置いて、自動車に踏ませ、固い殻を割って、中味を食べるという賢いカラスの話を聞いたこともあります。
しかし、このような賢い動物たちと言えども、人間との間には、本質的な違いがあるように思います。それは、「他の人のために道具を作れるか。」という点です。動物たちは、自分で道具を作って使うということはできるかもしれません。しかし、他の動物のために道具を作ってあげることはできません。
それは、彼らが人間に比べて不親切だからではないのです。現に、猿が他の猿のノミを採ってやっている姿は、動物園で、よく見かけます。動物たちが、他の動物に道具を作ってやれないのは、彼らには、目の前に見えていないことを想像する力がないからなのです。他の人のためにものを作ってあげるには、その人がそのものを使う場面を想像できなくてはなりません。自分の作ったものが、どんな結果を生むかを想像できなくては、他の人が使えるものは、作れないのです。
人間と他の動物との大きな違いとして、「言葉」というものが挙げられます。言葉を用いたコミュニケーションが人類の文明を築き上げてきたと言っても過言ではありません。この言葉というものの本質も、実は「想像する力」です。「りんご」という言葉を聞いて、林檎が想像できるから、相手の話が理解できる訳ですし、相手がイメージするであろう林檎が想像できるから、安心して話せるのです。つまり、言葉を介したイメージの共有があるから、コミュニケーションが図られるのです。
そういう意味では、コミュニケーションの手段は、言葉だけではありません。音楽も絵も、実は立派なコミュニケーションの手段です。そして、ものづくりも、コミュニケーションの手段の一つなのです。ものを作る時、みなさんは自分のことだけ考えて作っている訳ではないはずです。それを使う人、それを見る人、そういう人達が、みなさんの作ったものをどう考えるか。自分が工夫したことを相手が理解し満足してくれるかどうか。つまり、ものを介した価値観の共有を求めるということが、ものづくりの本質なのです。
そして、みなさんが作ったものを使う人達もまた、みなさんがそのものに込めた工夫や思いを、みなさんと共有することで満足するのです。しかも、ものづくりを介して伝わる思いは、時空を越えて伝えることができるのです。1932年、弱冠19歳にして、全長2メートルのロケットを、1600メートルまで打ち上げることに成功した、フォン・ブラウンの宇宙への思いは、ロケットというものづくりを通じて、今の私たちにも感じ取ることができるのです。
繰り返します。ものづくりは、皆さん自身の夢をメッセージとして込めることなのです。みなさんは、ここ徳山高専で、コミュニケーションの道具となる知識と技術を学びました。その知識と技術を最大限に生かして、皆さん自身の今の思いや夢を、未来へのメッセージとして込める。そんなものづくりをしてください。皆さん自身の若さとここ徳山高専で培った力を信じて、みなさんの夢の実現に邁進して下さい。
さて、みなさん。ご存知だと思いますが、今、徳山高専の校舎壁面の改修工事を行っています。本校創立以来、初めての化粧直しです。みなさんが、再び本校を訪れて頂く時には、装いも新たな姿になっているものと思います。また、いずれ、施設の本格的な建て替えの時期を迎えることにもなるでしょう。
しかし、校舎がどのように形を変えようとも、みなさんがここ徳山高専に残した足跡が、消えることはありません。そしてここで知り合った仲間達は、みなさんの将来を、期待を込めて、見つめ続けているのです。ここで学んだことに、自信と誇りを持って、それぞれの道を力強く歩んでいってください。
最後に、みなさんにお会いできたこと、そしてみなさんの門出に栄誉ある役割を果たすことができたことに、心から感謝して、式辞といたします。
平成17年3月16日
徳山工業高等専門学校長
天 野 徹
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