第25回卒業式 及び 第7回専攻科修了式

式辞  徳山工業高等専門学校長 天野 徹

 本日、ここに、ご来賓並びに多数の保護者の方々をお迎えして、徳山工業高等専門学校第25回卒業式及び第7回専攻科修了式を挙行できますことは、本校教職員並びに在校生一同の大きな喜びであり、ご臨席のみなさま方に対し、心からお礼を申し上げます。
 ただいまご覧いただきましたように、それぞれの課程を修めた卒業生119名、専攻科修了生25名、合わせて144名の若者が、本日、この学舎から、新しい道を求めて、巣立っていくこととなりました。彼らの新しい門出を迎え、これまで彼らを支え、励まし続けて頂いた保護者の方々、関係者の方々のお喜びはいかばかりかとお察し申し上げます。みなさま方のお力添えに対し、本校を代表して、改めてここに、感謝の意を表させて頂きたいと存じます。
 卒業生の中には、3名の留学生が含まれています。母国に思いを馳せながら、徳山高専において勉学に励んだ、橋本さん、ハイロルさん、そしてマヘーシさん。その向学心と努力に対して、それぞれのお国の国旗を日の丸とともに掲げることにより、敬意を表したいと思います。同時に、彼らを暖かく育んでくださった徳山市、周南地域のみなさま方に、彼らとともに、感謝の思いをお伝えいたしたいと思います。

 卒業生、修了生のみなさん。おめでとうございます。
 今、みなさんは、そこにあって、ここ徳山高専で過ごした日々のことを、それぞれに感慨深く思い出しておられることと思います。私自身も、たった今、みなさん一人一人に、卒業あるいは修了の証書をお渡ししながら、胸の中をよぎるものの多さとその熱さに、とまどうような思いでした。ましてや、列席の教官・職員の方々の胸の内は押して知るべしであり、いわんや、若いみなさんにおいては、格別であろうと思います。
 同時に、新しい道に挑もうとする者の常である、言い知れぬ不安を感じているみなさんもいるのではないでしょうか。それは、未知なるものに対する怯えと、自分自身の力に対する懸念の混じり合ったものでしょう。旅立ちにあたって、そのような思いを抱くことは、誰しもあることです。
 しかし、一つはっきり言える事があります。それは、今、みなさんの胸の内に去来しているであろう、この数年間の徳山高専での生活。その中で、伝え、伝えられたこと、共に作ったこと、競ったこと、そういった諸々の活動を通じてみなさんが培ってきた力は、みなさん自身が感じている以上に強く、大きいものであるということです。その力をもってすれば、遅かれ早かれ、新しい道を自信をもって歩いていけるようになると確信しています。私は、いえ、私だけではありません、今日ここにお集まりの方々は皆、みなさんがそういう力を身につけたことを感じ、確信し、そして誇らしく思っているのです。

 そのようなみなさんに、いまさら、この場で、多くを付け加える必要があるとは思えません。したがって、これからのみなさんの将来への期待をこめて、一つだけ、お話したいと思います。それは、「専門へのこだわりを捨てよ。」ということです。
 みなさんは、徳山高専で、それぞれに専門とする技術を、学んで来られました。そして、みなさんの身につけた専門技術が、世界中どこに行っても十分通用するものであることは、衆目の一致するところです。しかし、敢えて、その専門技術を、時によっては、捨て去る覚悟と勇気を持って欲しいと思うのです。
 技術者は、ともすると、専門技術が優れているがために、そこから飛び出せないことがあります。その仕事では、自分の専門が生かせないとか、自分の専門を無駄にするのは忍びないと思ってしまいがちです。その思いが、自らの行動を抑制し、新しい試みへの挑戦を妨げる結果を招いてしまうのです。
 優れた専門技術を持っていることは、大きなメリットであり、みなさんの強みです。しかし、それは、みなさんの持っている能力のすべてではありません。むしろ、みなさんの能力の本質は、専門技術そのものにあるのではなく、一つの専門をそこまで究めることができたこと。その力なのです。その「究める力」をこそ、みなさんの誇りとして頂きたいと思うのです。
 自分の強みを捨てて、改めてゼロからスタートするのは覚悟のいることです。しかし、技術者の本懐は、この世の中に新しい価値を生み出し、夢を実現することにあります。みなさんがこだわらなければならないのは、みなさん自身の夢であり、生み出したい価値なのです。専門技術は、それを実現するための、一つの手段にしか過ぎません。もし、その夢や価値の実現に必要ならば、それまでの専門を捨てても、新しい分野に飛び込む勇気を持って頂きたいのです。一つの専門技術をしっかりと身につけることができたみなさんならば、必ずや、新しい分野でも力を発揮することができるはずです。
 繰り返します。手段にこだわらず、みなさん自身の夢と実現すべき価値にこそこだわってください。一つの専門をここまで究めることができたこと、その「究める力」を信じて、どんどん新しい分野にチャレンジしていってください。

 さて、みなさん。今年から、徳山高専のホームページが大きく変わったことはご存知だと思います。ホームページから発信される情報の量も格段に増え、また本校に対する外からの意見や要望も受け入れられるようになりました。これは、徳山高専がこれからもみなさんと共にありたいという願いの表れです。また、近い内には、徳山高専同窓会「高城会」のホームページも立ち上がる予定と聞いています。徳山高専、そしてここで知り合った仲間達は、これからも、みなさんの将来を、期待を込めて、見つめています。ここで学んだことに、自信と誇りを持って、それぞれの道を力強く歩んでいってください。
 最後に、みなさんにお会いできたこと、そしてみなさんの門出に栄誉ある役割を果たすことができたことに、心から感謝して、式辞といたします。

平成15年3月17日
徳山工業高等専門学校長    天野 徹